マダガスカル産カカオを巡る旅 〜アケッソン農園〜

マダガスカル北部のサンビラーノ渓谷は高品質のカカオを生産する土地として、高い評価を受けています。マダガスカルのカカオ生産量は年間約6,000トン程度で、世界全体の生産量(約500万トン)の0.1%程度ですが、高品質のクリオロ種トリニタリオ種を中心に栽培しているため、多くのショコラティエビーン・トゥ・バーのメーカーから引き合いを受けています。

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今回は、サンビラーノ地区で代々カカオ栽培を続けているベルティル・アケッソン(Bertil Akesson)氏の農園を見学させてもらいました。アケッソン農園は、アラン・デュカス、フランソワ・プラリュ、ドモーリと言った素晴らしいショコラティエと取引をしていることからも、その品質の高さがわかります。Akessonのチョコレートは、チョコレートソムリエである札谷加奈子さんのサイトでも購入することができます。

t-sav.com

 

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クリオロ種という生産量の少ない品種で苦味が少なくとてもクリーミー


農園の中に足を踏み入れると、ひんやりとした、爽やかな土の香りが漂ってきます。カカオもコーヒーと同じく直射日光を嫌うため、シェードツリーと呼ばれる木々をカカオの木の間に植えて陰を作り出しています。カカオポッドと呼ばれる実を割ると、中には白い繊維を纏った種が入っています。生のカカオを口にしてみると、甘くライチのような味わいがします。マダガスカルのカカオは、ラズベリーのような爽やかな酸味が特徴です。カカオを生産する国はたくさんありますが、このような酸味を持つカカオは貴重なので、多くのメーカーがマダガスカル産チョコレートをラインナップに加えようとするのも頷けます。

 

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カカオの風味は、品種(クリオロトリニタリオフォラステロなど)、テロワール(同じ品種でも栽培する場所が違うと風味も変わる)に加えて発酵が大きく関わってきます。チョコレートが発酵食品であることは、あまり知られていないかもしれませんが、カカオ豆は発酵という過程を経ることで豊かな風味が生まれます。しかし、適切な発酵方法を知らないカカオ生産者が多く、風味のないカカオ豆が市場に出回っているのが現実です。

 

アケッソン農園の発酵をおこなうための部屋を見学させてもらいました。部屋に入った瞬間に、アルコールと酸味が混じり合った独特の香りが鼻をつきます。発酵中の豆を味見してみると、ビネガーのようなツンとした酸味が感じられます。ここから発酵と天日干しを行うことで、このツンとした酸味をまろやかな酸味に変えていきます。

 

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強い直射日光を避けるために農園で働く女性たちは顔に化粧をしています

 

木箱を三段に積み重ね、約6日間掛けて発酵を行います。発酵する際にはバナナの葉を覆いに使うことが多いですが、ここでは名産のサイザル麻を使っています。アケッソン農園では、木箱を使った発酵を行っています。箱が三段になってるのは、下の箱に移し替える時にカカオ豆が攪拌されることで均一な発酵を行うためです。発酵は、嫌気性のエタノール発酵と好気性の酢酸発酵の2段階のプロセスを踏みます。

 

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その後、約10日間の天日干しをすることで完成します。乾燥を終えた豆からは、馴染みのあるチョコレートの香りが既に感じられます。口に入れてみると、もう鋭い酸味はなく、爽やかな酸味がスーッと鼻を抜けていきます。発酵の過程は、天候によって影響を受けるので、それに合わせた調整が必要になります。そうした知識と経験があって、風味豊かな高品質のカカオ豆が生み出されます。

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