鮎の名店「比良山荘」の愉悦

「やはり鮎は、普通の塩焼きにして、うっかり食うと火傷するような熱い奴をガブッとやるのが香ばしくて最上である。」(北大路魯山人)

 

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滋賀にある鮎料理の名店「比良山荘」に行ってきた。
京都から若狭に抜ける鯖街道沿いの山奥にひっそりと佇む店である。

 

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恥ずかしながら、滋賀に30年以上住んでいて初めての来店だった。店名に「山荘」と付いていることからもわかるように、元々は比良山に登る登山客をもてなすための宿であった。次第に鮎料理を出すようになり、特に現三代目当主により熊、猪、鰻、鯉、スッポンといった滋賀の新鮮な食材をシンプルに提供するスタイルが確立された。いつも登山をするときにこの店の前を通り過ぎていて、その凛とした佇まいからいつか食事をしてみたいと思っていたが、ようやく叶った。この時期は子持ち鮎が主となる。

 

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ふっくらと香ばしく焼き上げた鮎は臭みもなく、えも言われぬ卵の芳醇な甘みが口の中に広がる。鯉の洗いは身がきりっと締まっており、酢味噌がよく合う。猪肉もまったく癖がなく、噛むごとに脂身の深い甘みがじわっと広がる。締めは鮎ご飯である。干し鮎で取った出し汁を鮎と一緒に炊いてある。
 

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初秋を感じさせる中庭を眺めながら、気付けば2時間半も食事をしていた。それは圧倒的に上質な時間であった。冬には月の輪熊を使った月鍋が出されるようである。ぜひ冬にまた再訪したいものである。
 

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